子育てを機に佐倉へUターン移住。ヘアメイク&撮影スタジオ「atelier IROITO」梅澤裕子さんの佐倉ライフ更新日:2020年02月17日

「子どもはできるだけいい環境で育てたい」と考える人は多いと思います。佐倉市でヘアメイク&撮影スタジオ「atelier IROITO(アトリエイロイト)」を運営する梅澤裕子(ゆうこ)さんもそのひとり。2人目のお子さんの出産後、東京から地元の佐倉市へ家族で移住してきました。ふるさとに戻って新たなスタートを切り、子育てや仕事の環境はどのように変化したのでしょうか?

保育園に入れない! 東京で直面した現実

ヘアメイク兼フォトグラファーとして活躍する梅澤さんが佐倉市に戻ってきたのは4年前。18歳で上京して以来、東京で暮らしてきた梅澤さんにとって、「地元に戻る」という選択肢はもともと頭になかったと言います。

――上京したのはヘアメイクの勉強をするためですか?
それが違うんです(笑)。東京の専門学校の雑貨ショッププロデュース科というところに進学しました。小さい頃から母の化粧台で遊ぶのが大好きで、中学生くらいから「ヘアメイクアーティストになる!」と決めていたのですが、成長するにつれて興味の幅が広がってきて、いろんなことを学べそうな学科を選んだんです。
ただ、やっぱりヘアメイクをやりたいと改めて思い、夜間にヘアメイクの学校に通いました。卒業後は美容室で働きながら、インテリアスタイリストとカメラマンのアシスタントのアルバイトをして、そんな中で出会ったのがヘアメイクアーティストの鎌田直樹先生。10年ほど先生の下で働かせてもらって、2010年に独立しました。

――なるほど。ヘアメイクさんでありながら写真も撮影できるのは、そうしたご経験があったからなんですね。生まれ故郷の佐倉市に移住を考え始めたきっかけは何だったのでしょうか。
長男の出産です。私たちが住んでいたところは都内の中でも保育園の激戦区で、フリーランスの私は特に保育園探しに苦戦していました。どんどん疲弊していく私を見て、あるとき夫が「引越ししてその労力をほかに使ったほうがいいんじゃない?」と言ってくれて。そこから東京を離れることを考え始めました。お世話になっていた近所のおでん屋さんのご夫婦が田舎に移住されたことも、きっかけのひとつでしたね。

でも最初は地元に戻ることは頭になくて、もっと地方に行こうと思っていました。四国とか沖縄とか、千葉でも房総のほうとか。

――なぜ最終的に佐倉市を選んだのですか?
移住フォーラムに行ってみたり、候補の街を見に行ったりするうちに、現実的ではないと感じるようになったんです。たとえば自然豊かな田舎は子育てによさそうですが、小学校の人数が少なくて運動会ができなかったりと、田舎ならではの課題もあることを知りました。ヘアメイクの仕事も人がいないとなかなか成り立ちません。

それで思いついたのが佐倉。都会すぎず田舎すぎず、いざとなったら都心に通うこともできる。子育て世代も多く住んでいて、私の親も祖父母も近くにいるので4世代で同じ街に暮らせる。そう考えると「いいかも」って。夫の出身は岐阜なのですが、話してみたら快く賛同してくれました。今では地元の人のようになじんでいます(笑)。

子育てをしながら、自身のスタジオをオープン

――佐倉市に戻ってきて、保育園には無事に入れましたか?
はい。第1希望ではなかったものの、車で15分くらいの保育園に2人とも入れることができて安心しました。

――「atelier IROITO」はいつ頃オープンしたのですか?
今年の3月で2周年なので、2018年です。移住してすぐの頃は近くのスタジオで働こうかなと考えていたのですが、日曜に出勤できないといけないところが多く、日曜は家族と過ごしたかったので悩んでいて…。たまたま市内に実家が所有する物件があって、ずっと使われないまま放置されていたので、せっかくならそこで何かやろうと考えるようになりました。

自分でスタジオを始めようと思ったきっかけは、通っていた児童館のママ友達。仕事でタトゥーメイクなども担当していた話をしたら、ちょうど2人目を妊娠していた彼女が「お腹に絵を描いて写真を撮ってほしい」と言ってくれたんです。そういうお店はこのあたりにはないので、私がお店を開けば地域の人たちに楽しんでもらえるかもしれないと思い、半年かけて準備をしました。

――温もりのある素敵なスタジオですね。かわいいお洋服や雑貨も並んでいます。
ありがとうございます。内装はほとんど手作りで、私の師匠であるインテリアスタイリストの先生にも手伝っていただきました。木工所に勤める夫のお手製インテリアや、私が作った撮影用の小物もたくさんあります。

――どんなお客さまがいらっしゃいますか?
多いのはマタニティーフォトやベビーフォトのお客さまですね。マタニティーのときに使った撮影用の飾りを生まれてきた赤ちゃんにつけて撮影したり、百日祝いで来てくださったあとに1歳や2歳の記念に再来店してくださったり、リピートいただくことも多いです。個人的に妊婦さんが大好きなんです、見ているだけで幸せな気持ちになれるので。お子さんにも母親のような気持ちで接しちゃいます(笑)。

でも、お客さまの層は限定していません。店名の「IROITO(色糸)」は「いろんな色の糸が集まる」という意味で、老若男女いろんな人たちが集まる中に私も1本の糸として加われたら…という思いを込めています。親子やきょうだいなど、家族の温かい空気感を写真におさめることができれば嬉しいなと思っています。

移住して取り戻せた家族との時間

――移住する前と後では、どんな変化がありましたか?
いちばんの変化は、家族との時間を持てるようになったこと。東京に住んでいたときは夫も私も仕事が不規則で、帰りも遅くなりがちでした。移住後は、夫は定時帰りの仕事に転職して、私も夕方以降と日曜・祝日は家にいられるようになったので、家族で一緒に過ごすルーティンができたのはとてもよかったです。

休日はみんなで佐倉城址公園や歴博(国立歴史民俗博物館)に遊びに行ったり、スタジオで使えるものを探しにリサイクルショップをめぐったりしています。毎週のようにどこかでイベントが開かれているのも魅力。

――お気に入りのイベントはありますか?
佐倉の秋祭りですね。毎年10月に3日間開催されるのですが、そのために仕事を休む人も多いくらい地元に愛されているお祭りです。地域ごとに山車や御輿が出て、露店もたくさん並びます。私は子どもの頃にお囃子を習っていたので、今でも秋祭りのお囃子が聴こえてくるとワクワクしちゃうんです。個人的には佐倉のいちばんの魅力だと思います!

移住には地域の人たちと関係性を築く大変さもありますが、私は秋祭りのおかげで近所の方々と親しくなれました。小学生の手古舞さんのヘアセットや着付けをやらせてもらうなど、「IROITO」を知っていただくきっかけも作れました。

――子育てをするうえで役立った市のサービスなどはありますか?
子育て世代包括支援センターにはとてもお世話になっています。子どもの食事や言葉などの悩みについてプロの方に相談できる場所で、保育園の先生も一緒に相談に行ってくれるので助かっています。昨年の台風のあと、バタバタして行けなかった時期があったのですが、こまめに連絡をくださったのがとても心強かったですね。

「あいさつが交わされるまち」を目指して

――子どもの頃と今とでは、まちの印象は違いますか?
地方はどこも同じかもしれませんが、個人店が減って大型店が増えたので、すごく便利になった一方でちょっと寂しい気持ちもあります。近所の駄菓子屋さんとおしゃべりしたりしていた子ども時代を思い返すと、そういう「あいさつが交わされるまち」を取り戻したい思いが強くなります。

まずはこの「IROITO」のある通りから元気にしようということで、スタジオ内で何度かイベントを開催しています。東京でお世話になっていたおでん屋さんご夫婦が香取市で農業をやっているので、その野菜や加工品を販売したり、駄菓子屋さんや飴細工屋さんに来てもらったり、ミニ縁日を用意したり…。台風で被災した野菜を買い取って販売している「チバベジ」さんと地元のレストランとコラボして提供した野菜メニューも好評でした。

今日お客さまとして来てくださっている、佐倉市在住のハワイアンシンガーのうすいなおこさんにレンタルスペースとしてお借りいただいたりもしています。あとは親子で参加できるパンづくり講座や、私のメイク講座なども増やしていきたいですね。

佐倉市在住のハワイアンシンガー、うすいなおこさんもお客さまのひとり

――まちの活性化にも積極的に取り組んでいるのですね。
やっぱり、自分の子どもたちにはワクワクしながら生きてほしい。東京や海外にも興味は持ってほしいですが、自分の育ったまちを好きでいられるって幸せなことだと思うんです。

佐倉はいろんな意味でバランスのいいまち。自然豊かなのに利便性が高くて、海にも山にも都会にも気軽に行けるし、昔から住んでいる人と移住してきた人がうまく共存している。私は子育てを機に戻ってきて改めてその魅力を知れたので、今住んでいる人たちにも、子どもたちにも、移住を考えている市外の人たちにも、もっと佐倉の魅力を伝えていけたらと思っています。

3月には「atelier IROITO」の2周年イベントを控えている梅澤さん。毎年6月に開催される「にわのわ アート&クラフトフェア・チバ」との連動イベント、「まちのわ」の実行委員も務めているそうです。子育ても仕事もまちづくりも楽しくがんばる梅澤さんのこれからに、ぜひご注目ください!


atelier IROITO ヘアメイク&フォトグラファー
梅澤 裕子
高校卒業後、上京。バンタンデザイン研究所にて雑貨ショッププロデュース科専攻、夜間にヘアメイク学校に通う。卒業後美容室勤務を2年。同時にインテリアスタイリスト、カメラマンのアシスタントとしてアルバイト。子ども向けファッションブランドの撮影でヘアメイク鎌田直樹氏に出会い、アシスタントとして従事。鎌田直樹氏のもと、ファッションショー、舞台、広告を中心に活動。ヘアメイクプランナーとして舞台アートにも参加。タトゥーデザイン、タトゥーメイクも担当する。2010 年独立。

<HP> https://iroito.shopinfo.jp

(モデル協力)
うすいなおこ (ハワイアンミュージシャン/シンガー)
<HP>http://usuinaoko.net/