佐倉のイタリアンが 『食べログアワード』受賞!「プレゼンテスギ」 杉岡 憲敏さんインタビュー更新日:2021年03月31日

佐倉市内のイタリアンレストラン「プレゼンテ スギ」。「食べログアワード2021」でシルバーとベストニューエントリーを受賞されました。オーナーシェフの杉岡 憲敏さんは佐倉市在住。地方のお店でありながら全国の食通をうならせる料理へのこだわりや、杉岡さんが育ったまち・佐倉の魅力についてお話を伺いました。

―「食べログアワード2021」を受賞されたご感想をお聞かせください。

正直取れると思ってなかったので本当にびっくりしました。その中でもシルバーって結構すごいみたいで光栄です。食べログの口コミの評価が高い店がとれる賞なので、お客様にそれだけ喜んでいただいているのかなと思うと嬉しいです。食べログのおかげで、県外からのお客様がとても増えました。新幹線や飛行機で来てくれる方も多いんですよ。

―「ゴ・エ・ミヨ(Gault et Millau)」にも掲載されたそうですが、ご感想をお聞かせください。

ゴ・エ・ミヨは日本ではあまり知られていませんが、これに掲載されることは実はかなりすごい事なんです。フランスではミシュランと同じくらい影響力があるレストランガイドなので、個人的には食べログアワードよりもびっくりするニュースです。いつか自分の店も見てもらえたらと思っていたんですけど、ノミネートを知らせる葉書が突然届いた時は大興奮でした。でも家族は誰もゴ・エ・ミヨのことを知らないので、一人で盛り上がっていました。

―料理へのこだわりを教えてください。

毎年目標を決めていて、去年の目標は「市場に行かない」でした。市場に行くと、もちろん美味しいものが揃っています。でも人と同じ食材を使うと似たり寄ったりの味になるんじゃないかと僕は思うんです。特に佐倉はイタリアンの激戦区なので、「どこかで食べた事ある味だな」とお客様に思われてしまうと生き残れないと思います。だから他の人が使わないような食材で料理を作ろうと決めました。 また、料理を出す順番も工夫しています。イタリアンやフレンチのコースは、最後にピークが来るように組み立てられていますが、僕は、和食のように中盤でピークを迎え、余韻を楽しみつつ終われる方が好きなんです。イタリアンでは、最後のメイン料理でお肉を出すのが当たり前です。でもその頃ってお酒も進んじゃってて味もよく分からないですよね。ワインもお肉もせっかくお金がかかっているなら、味覚が鋭いときに味わわないと意味がないと思います。だからうちでは、前半でお肉を持って来て、後半は少しなだらかになるようなコースの組み立てをしています。

―具体的にどのような食材を使っていますか?

佐倉は野草がたくさん採れるので、野草を多く使います。野草って野菜以下の扱いをされていますけど、料理に活かせるものも多いんです。僕はドクダミをチョコレートに練りこんでみたりしています。佐倉にはハコベやセリ、クレソン等も自生しているので、よく摘みに行っています。東京のシェフに話すとすごく羨ましがられます。豊洲の市場でハコベを買うと1パック1000円くらいするんですよ、雑草なのに(笑)。自分はタダですからね。 また、農家さんにお願いして市場ではなかなか手に入らないような野菜を作ってもらうこともあります。その中には、今ではほとんど作られていない野菜もあります。せっかくおいしい野菜なのにこのまま失われていくのはもったいない。誰かが使えば農家さんも作ってくれます。そのような野菜が失われないためにも、他の人があまり買わないような野菜を使うよう心掛けています。

―地元の食材を使う理由は?

フランス料理もイタリア料理も自分の土地をとても大切にしていて、自分の土地で育った野菜やお肉、自分の土地で造られたワインを使います。地元を愛することをイタリア料理から学んだので、同じことを佐倉でやりたいと思っています。店のカテゴリはイタリアンですが、「佐倉の料理」を目指し、材料はなるべく佐倉で揃えるようにしています。野菜は自分でも少し栽培していますが、ほとんど佐倉の農家さんやチバベジさんから仕入れています。取引する農家さんは、車で走っていて気になる畑があったら直接声をかけたりして少しずつ広げていきました。

―お客さんにどういったことを感じて欲しいですか。

ディズニーランドみたいなレストランを目指しています。ディズニーランドのように、いつ行っても「すごく楽しかったね、また来ようね。」って言ってもらえるような。デザートの話をすると、今のコンビニスイーツはレストランと同じレベルまで来ていると思います。それに対抗するには「美味しい」以外にも心に残ることが必要だと思うんです。うちのデザートで「里山の香り」というデザートがあります。それは僕が山で感じた音や香りを落とし込んだ品です。トレビスという紫キャベツのような野菜をパリパリに焼いて、ふきのとうとチョコレートをミキサーにかけたものを包みます。パリパリのトレビスを手で割ると、山を歩いているような音がするんです。木の葉を砕いているような。そして中のチョコレートを食べると僕が山で見つけたふきのとうの香りが感じられます。僕が山を歩いていて感じた楽しさ、音、香りを料理で表現し、お客様にも僕と同じように楽しい気持ちになってもらえたらと思っています。ディズニーランドに行った時のように、最後まで楽しい気分でお帰りいただき、そしてまた来てもらいたいですね。

佐倉での思い出、そして料理の道へ

―佐倉市での思い出を教えてください。

東京で生まれ、小学4年生の時に佐倉に引っ越してきました。その時衝撃を受けたのは、友達から「カブトムシ捕りにいこう」と言われたことです。東京ではカブトムシはペットショップで買うのが当たり前なので衝撃的でしたが、自分で捕まえてみると嬉しくて、東京の友達に捕まえたカブトムシをたくさん送りました。佐倉に住んでからは友達との遊びも変わって、山に入ったり、釣りしたり、自転車で遠くに遊びに行ったり結構外で遊びました。

―なぜ料理の道に進もうと考えたのですか。

保育園の時からコックになりたかったです。テレビで「料理の鉄人」を見て、すごくかっこいいなと思いました。中華料理のシェフは火をバンバン上げるし、フランス料理のシェフはフライパンにお酒をかけてブワっといろんな色の火を出すし。そしてみんなに美味しいって喜んでもらえるのってすごいなと思って。あの番組がなかったら僕はコックになっていなかったです。

―イタリアンというジャンルを選んだのはなぜですか。

元々はフランス料理が良かったんです。華やかでかっこいいイメージで、料理の鉄人の印象も強かったので。でも専門学生の時、テレビで「エルトゥーラ」というイタリアンの店を見たとき、絶対この店に入りたいって思ったんです。その頃イタリアンというと、スパゲッティ・ラザニア・ピザくらいで、おしゃれなコースのイメージはなく、手軽に食べるものっていうイメージでした。でも、テレビでその店のコース料理を見たとき、イタリアンなのにこんな素敵な料理あるの?!と衝撃を受けました。一流のレストランなので、当然専門卒なんか雇わないって言われたのですが、どうしてもその店で働きたくて何度も通って頼み込んで、条件付きで働かせてもらえることになりました。その後も「リストランテ・ヒロ」など有名店で働くことができ、最先端の技術を学びました。

―カステッロで修行されていたそうですが、その経緯を聞かせてください。

東京で働いているとき、佐倉にも素晴らしいお店があって東京ではできないことをやっているシェフがいると母から聞いたんです。正直「え、何言ってんの?」と思いました。その時僕は日本でもトップレベルのお店で働いていましたから。でも、実際にカステッロに行ってみてとても驚きました。今でこそ自家製野菜なんて当たり前になってきましたけど、当時は誰もやっていませんでした。でもカステッロのシェフは、ルッコラなど当時はスーパーで買えないような野菜でも種をイタリアから取り寄せて栽培されていましたし、ベーコンのような、既製品を使うのが当たり前のような食材も一からご自分で作られていたんです。自分がゼロだと思ってきたことは、このシェフにとってはゼロではないんだと驚かされました。シェフの料理への姿勢に感動し、その日にここで働きたいと思いました。ここに来れば周りのシェフよりもっともっと深みのある料理人になれると思って。

―カステッロではどのようなことを学びましたか。

料理の技術はもちろんですが、他のレストランでは学べないことをたくさん経験させてもらいました。料理を作るだけが仕事ではなく、畑や店の内装まで自分たちでしていました。店の定休日も一日中畑仕事をしたりでほぼ休みがなく、なんでコックなのにこんなことまで?!思っていましたが、今思えばあの時経験をさせてもらったおかげで今の自分があります。普通は辛いと思うようなことでも今は全然辛くなくできちゃいます。   実は自分の店の内装や外の装飾はほとんど自分でやったんです。カステッロでの経験がなかったら自分でなんてとてもできなかったです。

佐倉でのくらし

―佐倉の良い所、魅力をお聞かせください。

佐倉は自然がとても多いので、自然に触れることができるのが一番の魅力だと思います。わざわざ自然があるところを探して出かけなくても、少し外にでれば当たり前に自然がありますし。休みの日は、自分の子どもに野草やキノコの本を持たせて散歩に出かけます。また、知り合いの山に入らせていただいて、一緒にタケノコやふきのとうや山菜を取ったりもします。子どもにとってもいい環境だと思います。

―佐倉市内の料理人グループ「佐倉イズム」に参加された理由は。また参加されていかがですか。

佐倉に住んで長いですが、佐倉について知らないことがたくさんあるので、皆さんかいろいろ学べるいい機会だと思いました。佐倉を盛り上げたいって人が集まれば、より良い情報交換の場になるはずですし。飲食だけじゃなく他の業種の方もいるので、自分の幅をもっと広げるためにも是非参加したいと思いました。

―子育てでこだわっていることは?

なるべく自然に触れさせたいと思っています。こんなに素晴らしい環境があるので、積極的に外に出て欲しいと思いますね。あと、年に2回家族のために『ミチュラン』というのを開催して、お客様に提供しているものと同じ料理を子ども達に食べてもらっています。仕事中は子どもを犠牲にしているので。本当だったら宿題みてあげたりしたいんですけど…。子どもには我慢させてしまっていることが多いと思いますが、いつも協力してくれているので、そのお礼の意味を込めて、店で出す料理を食べて楽しんでもらおうと思っています。

佐倉をもっと魅力あふれるまちへ

―今後、ご自身のお店やお料理をどのようにしていきたいですか。

やはりミシュランにも載ってみたいなと思います。そして世界中からお客様が来るようなレストランにしたいです。あと、お店をもっと小さくして、客席をカウンターにしてお客様と対面で料理を組み立てるようなことできたら面白いだろうなと思いますね。お寿司屋さんやてんぷら屋さんみたいにライブ感がある店に憧れます。

―今後、地元佐倉とどのように関わっていきたいですか。

いろんな人とタッグを組んで、一つの作品・イベントができたらいいなと思います。様々なフィールドの人が集まって、佐倉の集大成みたいなことをやりたいですね。佐倉って魅力的な人がたくさんいると思うので、そういった方たちとのつながりを深めて佐倉を盛り上げていきたいです。

―佐倉がどんな街になったらいいと思いますか。

もっと子どもが参加できるイベントがもっとあれば面白いのになって思いますね。佐倉にはたくさん自然があって、楽しめる場所が多いと思うんですけど、どこでどう遊ばせたらいいか分からない親も多いと思うんです。市の方には、イベントの開催や情報の発信をもっと積極的にしてほしいと思います。そして、たくさんの親子が外で楽しく遊ぶ明るい街になったらいいなと思います。

■「プレゼンテスギ」杉岡 憲敏 氏 プロフィール

佐倉中学校出身。東京の名店や、佐倉市臼井にある「リストランテ カステッロ」で修業したのち、2016年佐倉市白銀に「プレゼンテ スギ」をオープン。創意工夫を凝らした料理が、高い評価を受け、なかなか予約が取れないほどの人気店に。2021年1月に発表された「食べログアワード2021」では、シルバーを受賞。ベストニューエントリー賞と合わせダブル受賞となった。地元で採れた食材にこだわるほか、自ら野菜なども栽培し、料理に活かしている。また、佐倉市内の料理人のグループ「佐倉イズム」に参加してイベントなどにも出展し、地域を盛り上げる活動にも取り組んでいる。

◆食べログアワード2021

https://award.tabelog.com/

◆プレゼンテスギ 公式ホームページ

https://presente-sugi.gorp.jp/