ローマ教皇の昼食会を担当したのは佐倉のレストランだった! 「オリベート」萩原勇作さんインタビュー更新日:2019年12月26日

2019年11月、ローマ教皇として史上2人目、38年ぶりに訪日したフランシスコ教皇。長崎や広島でのスピーチ、東京ドームでの大規模ミサなどが話題になりましたが、都内の駐日ローマ法王庁大使館で開かれた昼食会にも注目が集まっていたことをご存じですか? 昼食会を担当したのは、佐倉市で親しまれている地域密着型のイタリアンレストラン「オリベート」。そのオーナーである萩原勇作さんに、昼食会での貴重なエピソードをお聞きしました。

自家製パンがきっかけで、大使館での晩餐会を担当

 

「オリベート」オーナー 萩原勇作さん

――昼食会が開かれた駐日ローマ法王庁大使館とは、もともとお付き合いがあったのですか?

はい。最初は自家製のパンを納めていたのですが、「晩餐会の料理を提案してみないか」というオファーがあり、和の要素を取り入れたイタリア料理を提案したことが始まりです。

「オリベート」は、日本の食材や調理法を活かした、イタリア人には作れないイタリア料理をコンセプトにしたレストラン。そのため升酒で乾杯するなどチャレンジングな提案をしたのですが、受け入れていただき、2015年から毎年晩餐会を担当させていただいていました。

――今回の依頼はいつ頃に受けたのでしょうか。

実はお話をいただいたのが10月末。昼食会の1か月前でした。ローマ教皇が訪日されることはもちろん知っていましたから、「料理をご提供できたら嬉しいね」と冗談半分で話していたのですが、まさか現実になるとは…。とても光栄な反面、私たちのような地域のレストランでいいのだろうかという不安も正直ありました。

――準備期間が1か月とは大変でしたね! そこからどう進めていったのですか?

教皇は過密スケジュールのため、時間を厳守してほしいということだけは言われましたが、「料理はすべて任せる」と。ですのでシェフたちと料理のテーマを考えるところから始めました。

まず、地元密着のお店なので、この日のためにいきなり高級食材を使うことはやめようという話に。普段使っている食材の中で最高品質のものを使うことにしました。

また、その頃はちょうど千葉が台風の被害を受けた直後。私たちも地元のために何かしようと、被災農家を支援する「チバベジ」という団体から被災野菜を仕入れて料理として提供していました。味に問題がないのに市場に卸せなくなった被災野菜を活用することで、生産者の支援やフードロスの解消に少しでもつながれば…という思いからです。

その被災野菜を今回の昼食会でも使えないかと思い、確認をとったところ、「無駄にしないでぜひ使ってくれ」と快諾いただきました。そこでコース料理のテーマを「日本の魅力と千葉を元気に」と決め、具体的な料理内容を考えていきました。

「チバベジ」から仕入れた地元産の被災野菜

 

「オリベート」を牽引する料理長の鈴木克美さん

 

 

ローマ教皇、「イタリアで食べるよりおいしい」

――提供されたコース料理について、こだわりなどを教えてください。

「日本の伝統」 寿司の盛り合わせと野菜すし

コースは全7品。当店には和食出身のシェフもいるので寿司をコースに入れ、先方のご要望で1品目にご提供しました。本マグロ、昆布締めヒラメ、海外の方でも食べやすいサーモンに、エリンギ・ミョウガ・芽ネギのお寿司。あとは梅干し入りのひとくちおにぎりもつけました。

「絆のボロネーゼ、千葉の架け橋」 千葉の被災した緑農野菜、八千代黒牛、ポルチーニ茸、黒トリュフの饗宴

自家製の生パスタには、食材を無駄にしないという思いを込めて「チバベジ」の被災野菜と八千代黒牛のスジ肉を使用。そこにイタリアの食材であるポルチーニ茸と黒トリュフをプラスし、千葉とイタリアの「架け橋」を表現しました。

「黒潮の恵み」 千葉県産金目鯛と長生ネギのヴァポーレ炙り雲丹のソース

自家製パン2種のあとは、今回特に農業被害の大きかった茂原の長生ネギを使用した一皿。日本の豊かな海をイメージした盛りつけにしました。

「房総の祝菜」 桜の木の香りを纏った千葉県産牛フィレの炭火ロースト、バルサミコ仕立ての緑農人参と千葉の落花生と共に

メインディッシュは千葉県産の牛フィレ。バルサミコベースのソースで仕立てた人参とゴボウ、佐倉産の落花生をつけ合わせにしました。

「四季のうつろい」 晩秋の紅葉を感じるクラシックティラミス、成田ゆめ牧場のヨーグルトと塩麹で作った発酵ソース

ハードスケジュールをこなされていた教皇に日本の四季を少しでもご紹介できたらと思い、紅葉をモチーフにした器を使いました。柔らかく食べやすいティラミスは、ヨーグルトと塩麹の味わいがアクセントになっています。

「ひととき」 自家製の焼き菓子

最後は焼き菓子。すべての料理において、食材から器までストーリーを感じられるようなものを厳選し、イタリアンの枠を超えた料理を提供することにこだわりました。

セキュリティの関係で直接ご提供はできませんでしたが、配膳を担当された方から「イタリアで食べるよりおいしい」と教皇がおっしゃっていたとお聞きし、嬉しさと安堵で胸がいっぱいになりました。昼食会のあとに特別謁見の時間があり、そこでいただいたロザリオは大切な宝物です。

教皇から贈られたロザリオ

萩原さんとスタッフのみなさん

 

――このような貴重なご経験をされて、今、率直にどう感じていますか?

先方のご要望をクリアできてホッとしているのと、地元を元気にすることに少しでも貢献できて嬉しく思っています。

今回提供した料理と同じものを食べたいというお問い合わせをたくさんいただき、一部メニューのご提供と、ローマ教皇昼食会特別コースのご提供を始めました。九州などの遠方から来店してくださるお客さまや、被災野菜のメニューを召し上がって「食べて被災地をサポートできるなら最高ね」と言ってくださるお客さまもいて、今回のことをきっかけにますます地元の役に立ちたいという思いが強まりました。

 

家庭をもって改めて感じた、佐倉の魅力

――ここ「オリベート」ユーカリが丘店をはじめ、千葉県内でいくつか飲食店を経営されていますが、萩原さんは千葉ご出身ですか?

いいえ、出身はつくば市です。大学院でアメリカの流通経済を勉強し、なかでも華やかでかっこいいアメリカのレストラン業態に興味をもって、最初はつくば市にビュッフェレストランを出店しました。

佐倉市に初めて出店したのは18年前。おもしろい街があると聞いて見に行ったら、森を抜けてすぐにモノレールが走っていたりと本当にユニークな街だった。農業がさかんで海も近いので、いい食材が入りやすい点も魅力でした。素材を純粋に活かすならイタリア料理がいいのではないかと思い、そこからイタリアンレストランの展開を始めたんです。

――現在のお住まいは?

佐倉市です。6歳と4歳の子どもがいるのですが、家庭をもってみて改めて佐倉の住みやすさを感じましたね。街がごちゃごちゃしていないし、子育て環境も整っている。子どもとはよく「草ぶえの丘」に遊びに行きます。あと、食や環境に対する意識の高い人が多いことにも、住んでみて気づきました。いろんな潜在能力をもっている街だと感じます。

――そんな佐倉で、今後はどんな人生を歩んでいきたいですか? ビジョンがあればお聞かせください。

経営者としては、これまでと変わらず地元密着で、期待を超える料理を提供していきたいです。飲食業は、お客さまの反応にダイレクトに触れられる仕事。満足の笑顔をいただけることがいちばんのやりがいです。

仕事も家庭も、ストレスなく楽しく両立できることが理想。アメリカのポートランドの人たちのように1日1日を大切に暮らしたい。佐倉であれば、そんな理想の暮らしができるのではないかと思っています。

 

株式会社パシフィックプロジェクト 代表取締役CEO

萩原 勇作

イタリアンレストラン「オリベート」ユーカリが丘店・千葉ニュータウン店をはじめ、千葉県と茨城県にて飲食店を経営。地域密着のオリジナルブランドの店舗経営にこだわる。

https://oliveto.jp